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昨日は無理にでも寝たおかげで、今日はとても清々しい気分で起きられた。あのキャサリンという人と合流するまでは……。
カナデ達は鉱山探索に行くために2時間ほど山の中を歩き、そして現在――カナデ達の目の前には青白く輝く水晶が広がっていた。
「んまぁ!すっごぉい綺麗ねー!」
「っていうかキャサリンのその服寒くないのか?露出度めちゃくちゃ高いけど……。」
「このくらいへっちゃらよ!さ、早く探しましょ!」
ここの鉱山にある水晶は正直どれを選んでも力を得られるらしいのだが、俺達が探しているのは伝説の緑色に輝く水晶である。
最近は人工で水晶を作ってしまうことが多くなってしまったため鉱山はほぼ使われなくなり、一般人が勝手に水晶を取ってもいい鉱山が数多く指定されている。
「ここすごい寒いんだけど、なにここ」
と言ってきたのは俺の意識の中に潜む精霊だ。あれからというもの、最近は度々俺の意識に話しかけてくるようになった。まぁ俺が寝たら確実にこいつがいるもんだから仲良くなったのは紛れもない事実だが。
「あったっ!あったよー!」
「えっ!?うそ!そんなに早く見つかるものなの?」
「二人とも急いでこっちまで来て!」
ユリはいつの間にか俺たちよりも奥地に行ってたらしい。ユリの元へ近づくと緑色に輝く水晶があった。
「よし!これを加工してネックレスにしよ!」
「なぁユリ、この水晶で剣って作れないのか?大量の魔力があるんだろ?だったらこれを剣にしたらつよいんじゃないのか?」
「確かに剣にしたら強いけど、こんな多くは重すぎて持って帰れないしなぁ」
「あら、私の力を舐めるんじゃないわよ?いる分の水晶を取ってこの袋に詰めなさい」
そう言うとカナデ達は使う分の水晶を袋につめた――キャサリンは「おりゃあああ!」と言いながら人間とは思えない程の力を発揮し、軽々と鉱山の外まで運び込み、山の中間までたどり着いた。
「はぁー、やっとここまで来たわねぇー」
「それにしてもキャサリン、お前すごいな。なんでそんなに重いものを持てるんだよ」
「あらぁ、ダーリン惚れちゃったの?もう、恥ずかしいじゃないの!」
「いや、意味わからんから」
山の中で響く3人の笑い声。
これはこれで楽しいと思った。だが、そう思っていたのもつかの間だった·····。
「おい、お前の持っている水晶を全て渡せ」
それは突然背後に現れた。その声はユリの声ともキャサリンの声とも精霊の声とも違う――まさか!?
「誰よ!あなた達!これは渡さないんだから」
キャサリンが反抗しようとすると敵はキャサリンの顔に腕を伸ばし、力を少し入れたかと思うと一瞬でキャサリンが気絶した。これはきっと気絶魔法であろう。
「あなたは一体?その様子だと帝国軍みたいね」
紫の衣に包まれた背の高い男。確かに帝国軍の象徴とされる紫色をまとっている時点で帝国軍は確実だろう。
「あったりぃ!帝国軍準4天王の1人――ポイズンである!お前らの水晶、頂くぞ」
その瞬間、俺たちの周りに5人くらいの敵が現れた。ということは前々からつけられていて現状囲まれているということだろう。
「カナデ!ここは私に任せて!全員片ずける!」
「俺だって戦えるよ!ユリは雑魚5人を頼む!俺はこいつをぶっ殺す!」
「いいねぇえ!いいよぉお!その殺意もらったぁああ!」
――ッ!
相手の武器はどうやら紫色の片手剣。カナデは片手剣を引き抜き相手が勢いよく振り下ろしてきた剣を自分の剣で受け止めた。
「なかなかいい反射神経じゃないかあ!いいよぉお!これならどうだああ!」
相手は1歩下がった後、勢いよく走りながら横に斬りつけてきた――1歩下がってそれを避けると、相手は2撃目を繰り出し、俺の剣は……折れた。
「ああ!折れちゃったねぇ!剣!!」
後ろのユリもタガーで応戦をしているが、さすがに5人対1人は苦戦を強いられている。
――なんとかしなければ!
「おい、力を使え!ここで死なれては私が困る!これからその方法を伝える――いいか?よく聞け!感覚としては腕の内側に力を入れて手の先で放つ様に!わかったか!なら殺れ!」
「さぁ!しねぇぇぇぇえ!」
「これ以上俺のせいでみんなを傷つける訳にはいかないんだぁぁああ!」
敵が斬りつけてきたその瞬間――俺の手から炎が溢れ出し――炎が瞬間的に剣を形作り攻撃を受け止めた。
「面白い!おもしろいぞぉぉお!」
「相手が反動で離れた今がチャンスだ!相手の足元を狙って放て!」
「はぁあああ!」
炎を放つように手を向けると敵の足元から空中に火柱が立ち――相手を燃やし尽くした。
「な、なんだあれ!に、逃げろぉ!」
「逃がすか!はぁあああ!」
残りの残党の足元から次々と火柱が立ちだし――何もかもを燃やし尽くした。
「ハァ……ハァ……。」
「か、かなで……。君ってまさか」
カナデは気が抜けた瞬間何も言わず、その場に崩れ落ちた。
「――世界を滅ぼす者」
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