8人が本棚に入れています
本棚に追加
下に俯いたら何度も面接に行っているせいかヒ―ルが汚くなっていた。
下なんて見てなかった。下なんて見る暇なんてなかった。でも、こんな汚いヒールを履いていたら、受かるはずもない。
私はA会社を出た。
雲はひとつもなく、私の気持ちなんて関係なく外は晴れていた。
真っ直ぐに家に帰りたくなかった。帰ったって、母親が無理に笑った表情や静かな家にある変な空気。見えない表情や空気は、私にとっては辛い。
近くにあるバス停に乗らないで、何処に行くあてもないが誰もいなく、広いところに行きたくて、ひたすら歩いて探していた。
何時間経っただろうか。誰もいなくて、広い草原が見えてきた。都会なのに草原があるのは珍しいと思った。
人工的に作られたのかと思えたが、その場所は、近くには川があって子供達が遊べるような公園もあった。ここは日本と疑うほどの広い草原であった。
「なに、ここ」
私はひとり呟いた。
私はこんな広い草原を見たことなかった。
そんなことを思っていたら、遠いところから声が聞こえた。
最初のコメントを投稿しよう!