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13歳の夜に
霧深き森の奥で、小さな村がクリスマスを迎えていた。青い月明かりとキャンドルの光に照らされる中、一様に黒いローブをまとった魔女たちと使い魔がテーブルを囲む。クルク鶏の丸焼きに、クリスマスプディング、ミモラサラダ…、卓上にはあふれんばかりの料理がならび、華やかな様相だ。彼女たちの視線は料理ではなく、中央に置かれた古時計に注がれていた。傾く針が一刻、また一刻。グラスを握って固唾を飲み、秒針が進むのを見守る。
「さーーん、にーーい、いーーち」
魔女たちのカウントの声と共に、時計が0時を指す。
「みんな、お誕生日おめでとーー!」
カラーン!と景気のいい音が鳴り響き、これまでの静寂が嘘のような喧噪が訪れた。総勢二十人ほどの魔女たちが各々テーブルをかこみ、ジュースで乾杯している。続いてごちそうが取り分けられ、そこここで温かな湯気とかぐわしい香りが立ち上った。相当な量の食事が用意されているが、うら若き彼女たちのぺったんこの胃袋にかかればすぐに元の白い皿に戻りそうである。
今日は年に一度、村の全員が主役の日。そう、誕生日だ。この村の魔女たちは皆12月25日の生まれであった。
「お誕生日おめでとう、ベニエ!」
「あいたっ!気を付けるポン!」
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