13歳の夜に

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グラスをかかげるおさげの少女クロナが、周囲の喧噪を上回る大声を張り上げる。金茶の髪の毛をざっくり編んだごん太おさげは、腰まであって動くたび上下にはねた。丁度真横をふよふよと飛んでいた白コウモリのポンチキをおさげが直撃し文句を言われるも、少女の耳には届いていないようだ。 「ありがとう。クロナも、みんなもおめでとう」 祝いの言葉を向けられた当人、ベニエがにこやかに謝辞をのべる。ふわふわのショートボブから覗く切れ長で涼やかな眼、通った鼻筋に落ち着いた声音。可愛いというよりは美形、と形容した方が良いだろう。そんなベニエの微笑み1つで、辺りにいた魔女たちの頬がぱっと染まった。 「もう13歳になってしまった。・・・8年なんてあっという間だ。」 気丈に笑うベニエだが、その笑みはとても寂し気だ。 「いつ、行っちゃうの?」 おさげの少女、クロナが尋ねる。 「明日……いや、もう今日か。あと数時間後、夜明けとともにイズワール先生が送ってくれるそうだよ。」 「そっかあ……。あーーもう、寂しいよーー!」 クロナにつられ、側にいた魔女たちも口々に別れを惜しむ。村で最年長である彼女は魔女たちにとって姉のような存在であった。 「ベニエがいないと、チビたちも不安だろうな。」 「大人になったら村には帰ってこれないしきたりなんて~、厳しすぎるよね~。」 しんみりとした空気に村が包まれる。すすり泣く声が漏れるすんでのところで、クロナが突然立ち上がった。 「はい!はいはいはーーい!」 「いきなり何ポン、うるさいポン」     
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