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 ところが、しばらくして女は不意に心配になってきた。この強風である。木の枝に掛けたところで、また飛ばされてしまうのではないか。  せめて石か何かを重しにして、ベンチの上にでも置いておこう。そう思い、女は街路樹の手前まで戻った。  すると、そこには人がいた。どうやら、落とし主が来たようだ。枝に掛けた洗濯物を見つめて、じっとしている。 「どんな人なのかしら」  女は気になり、その人の方を見た。しかし、コートに帽子にマフラーという格好で、容姿はほとんど分からない。  いっそ声でも掛けようかしら、と近づきかけたときだった。 「えっ」  女は目の前の光景に唖然とし、思わず足を止めた。
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