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「静流さん、朝ですよ。起きてください」
「……ん」
私の一日はお手伝いさんの咲子さんに叩き起こされることから始まる。
「おはようございます、静流さん」
「……眠い」
「そうですね、眠いですね。でももう起きないと確実に遅刻しますよ」
「……」
容赦ない咲子さんの声に渋々ベッドから這い出る。
「……智広さんは?」
「もう会社です。朝一で会議があるそうですよ」
「…ふぅん」
(また会議か)
もう何日逢っていない?というかうちの会社、大丈夫なの?
「静流さん、会社の会議は別に経営不振時だけにあるわけじゃないですからね」
「わっ、なんで私が考えていることが分かったの?!」
「もう何年静流さんのお世話をして来たと思っているんですか?静流さんが何を考えているのか、その表情から読み解けます」
「…さっすがぁ」
少し皮肉めいて呟いてみた。
「さあ、顔を洗ってダイニングルームに来てください」
「はぁい」
私の皮肉にはすっかり慣れている咲子さんは大して態度を変えること無く忙しく行動していた。
私は宇都宮静流。この春高校生になったばかりの15歳。
私の家は【UTSUNOMIYA】という、まぁそこそこ有名な老舗製菓会社を営んでいた。現在代表取締役社長なのが私の義父、宇都宮智広だった。
「いただきます」
目の前に並べられた洋風の朝食を広いダイニングルームでひとり味わう。これはいつもの光景。もう慣れ過ぎて寂しいとは思わなくなっていた。
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