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「白っ今さらジタバタすんなっ。往生際が悪いぞ。」
振り向いた女子部員達から一斉に黄色い悲鳴が上がった。
黒が王子様の服を身につけて現れたからだ。
さすが黒……思ってた以上に着こなしている。
どこからどう見ても物語に出てくるような美形の王子様だ。
どことなく気品までただよっている。
黒が俺の前まで来てうやうやしく頭を下げ、片手を差し出してきた。
「姫、次はあなたの番ですよ。」
また女子部員達の悲鳴が上がる。
すっかり役になりきってやがる…ちょっとドキッとしちまったじゃねぇか……
これはもう…覚悟を決めるしかなさそうだ。
「黒君、通し稽古の前に王子様のシーンだけ確認しときたいから今すぐ体育館まで来てくれる?」
監督が部室のドアを開けて入ってきた。
「俺もう王子のセリフは完璧だけど?」
「立ち位置わかってないでしょ?サボりまくってたから。」
「でも今から白が……」
「いいからっ!時間ないからすぐ来るっ!」
黒は王子様の服を脱がされ、監督に体育館へと連れてかれてしまった。
俺の方を見ながらずっと文句をぶうたれていた。
どんだけ女装姿が見たかったんだあいつは……
「黒君て怖いイメージあったけど、なんだか違うね。」
咲希ちゃんが俺にドレスを着せながらクスクスと笑っている。
「黒は誤解されやすいんだよ。本当はすごく良い奴なんだよ。」
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