きみは思い出

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 あの頃。私達が中学生だったころ、クラスは学級崩壊をおこしかけていた。いじめっ子たちが台頭し、生徒はおろか先生のことまでいじめた。気の弱い私は毎日泣きたい気分でおそるおそる登校していた。そんな私を励まし、共に歩んでくれたのがミサちゃんだった。嵐のような学校生活を共に乗り越えた親友。私はそう思っていた。  やがて、式がおわり、披露宴がおわり、二次会の時がやってきた。なんでもミサちゃんは用事があるらしく、二次会には出席せずに帰った。私達はしっかりアドレスを交換し、次の約束をとりつけた。  数日後。  私達はとあるカフェで落ち合った。私はレモンティーとイチゴショート、ミサちゃんは、カフェオレとモンブランを注文した。考えてみれば10年ぶり位の再会なのだ。私達は最初、まるで他人同士のようにぎこちなかった。しばらく沈黙が続いた後、私から切り出した。    「この間の結婚式、豪華で素敵だったね。ミサちゃんは今、結婚を考えている彼氏とかいるの?」   この後のミサちゃんの返事に、私は驚愕した。  「あ、私もう、ハタチのときに結婚してるの。子どももふたりいる。」  「え・・・!?でも名字は・・・?」  「たまたま同じ名字だったの。」   無二の親友だと思っていたミサちゃんが結婚していたなんて!   そして思い知った。結婚するということが、どれほど女同士を切り離すかということを。   話題が、あわない。   独身彼氏無しの私と、子どもをふたりもつミサちゃんでは、話題が全くあわないのだった。私は仕事や婚活の話がしたい、ミサちゃんは子どもの話がしたい。そんなこんなで、私達の再会は、終始ぎこちないままで終わってしまった。  家に帰ると、私はなんだか身体の力が抜けてしまい、ソファに沈み込んでしまった。  かつてあれほど仲のよかった私達だけど、今はとても遠くに感じる。そしてそれはむこうも同じだろう。  時間が経っていても、再会さえすれば昔みたいに戻れると思っていた。  だけど違うのだ。時間の流れと共に、私達は否応なしに変わったり、離れ離れになってしまうものなのだ。それは抗うことの出来ないものなのだ。
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