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帰り花
何色とも分からない海を割る朱。渡っていけば、私にも約束の地が与えられるのだろうか。それとも、ただ溺れ死ぬだけだろうか。黒い雲に押し潰されるように、日が落ちていく。
ガードレールを握り締めた両手はじっとりして、潮の滑りを黒くなすり付ける。セーラー服の襟を束ねるように結ばれた、スカーフのくたびれた白が、弱々しい風にすら煽られて顎をすうっと撫ぜた。このずっと下の、ともすればすぐ足元に敷き詰められた砂利のようにも見える、じいっと波に削がれて丸くなった岩たちからのラブコール。
それ以外は、なにも感じない、なにも聞こえない。土曜日のこの道には、車も走らない。
今日は絶好の、自殺日和だ。
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