蹴破り戸

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「ええっと…どんな指輪ですか?」 私が具体的に質問すると、左手はまた筆談で答えたよ。 〝結婚指輪です。男性物の。プラチナで、私のこの指輪のペアです〟 そう。左手はずっと、ご主人の結婚指輪を探してたんだ。 私、ちょっと泣きそうになってさ。 だって、なんて健気なんだろうってね。 あんなに必死な様子で探してたものがご主人の指輪だなんてさ。 愛だよね。 私、この左手の願いを叶えてあげたいってすごく思っちゃって。 それでさ。よく見たら、左手がつけてる結婚指輪、なんだか見覚えのあるデザインだったの。 緩いウェーブラインに、細かくミル打ちされててさ。 あれ、これって私が前つけてたのとよく似てるじゃんって。 てことはさ。 ご主人の結婚指輪もこれと対になるデザインってことはだよ、私持ってるじゃんって。 天啓を得た!って感じで閃いて、大急ぎでタンスを漁りに行ったの。 捨てるに捨てられなかった、元旦那の結婚指輪。 5年間の結婚生活でも「指に何かつけるの煩わしい」って言ってほとんどつけてくれなかったから、かなり綺麗な状態だったんだよね。 そしてやっぱり思った通り、左手がつけてる指輪とよく似たデザインだった。 これがペアのもう片方ですよって並べても全然違和感ない感じ。
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