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それでどうしたかって?
決まってるじゃん。左手に渡したよ。
「お探しのものはこれですか」って。
左手はしばらく、元旦那の指輪を手のひらで転がしたり指先でなぞったりして、少し訝しげだった。
だから重ねて言ったんだ。
「もしお探しのものがそれでなかったとしても、よかったらそれを持って行ってください」
「大事なものの代わりにはならないかも知れませんけど、好きにしていただいて構いませんから」って。
左手はそれでもちょっとためらうような様子で、しばらく指輪を掌に乗せたまま固まってたけど、最終的には指輪を握りしめてまたペンを取ったんだ。
〝ありがとうございます。ではこれを連れていきます″って、丁寧に書いた。
それから、消え入るように蹴破り戸の向こうへ引っ込んだよ。
それ以降もう、左手が出てくることはありませんでした。おしまい。
大団円だね。
私は満足感と幸福感で、しばらくそれだけで白飯食べられるような気分だったよ。
『なんで!? いいの!?』って思ってる?
いいんだよ。
楽しいこともあったけどやっぱり、裏切られたり、殴られたりしたことは許せないじゃない。
だからあの手に持って行ってもらってよかったの、あの指輪。
今すごくスッキリしてるよ。これが、憑き物が落ちるってやつなのかもね。
そんな顔しないでよ。私ほんとに満足してるんだから。
たとえあの手が何だったとしてもさ。
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