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ザ・ドは夢の中にいる自分を自覚していた。
この夢は、幾度となく見ている『あの夢』であることを意識している自分がそこにいた。
空飛ぶゴンドラであるブラックサンダー号に一人乗って嵐の空を飛んでいる・・・
ゴンドラは嵐に捲かれて木の葉のように空中でもまれている。
舵が効かない、ゴンドラは気密性が高く製作されているから外の嵐の轟音は室内までは届かないが、透明なガラスの窓越しにはその凶暴な大気の吠える音が聞こえるようで空の色を暗紫色に染めて雲が急速に渦巻いているのが見てとれる。
『この状態が今少し続く、それを乗り越えれば次の世界に出ることができる』
ザ・ドはそのことを経験で知っていた。
『もう少しの辛抱さ!ほら、前が明るくなってきたぞ』
ザ・ドが気付いた通り、周囲の嵐が和らいできた。
ブラックサンダー号の行く手の空・空気が明るさを取り戻っしつつある。
『さあ、抜けるぞ!そこは青空のはずだ!』と、心の中で叫んだザ・ドであった。
フッと何かが吹っ切れたようにポンと音が出たようにブラックサンダー号が青空の中に浮かび出た。
『ほら、やっぱり出たぞ!今度はどんな世界に出たんだ?』
ブラックサンダー号の後ろを見れば渦を巻いた暗紫色の雲がどんどん姿を
小さくしてやがて消えさった。
一面の青空が広がっている。
太陽が煌々と照り、下を見れば真っ青な海が広がっている。
みれば前方に予想していた通りに陸地が見えてきた。
『夢の中では念じればそれが具象化するんだ』と、再確認していく。
『そして、街が見えてくるはず・・・』と、考えていると空飛ぶゴンドラのブラックサンダー号は陸地の街を眼下に見ることができるように飛んでいる。
色とりどりの旗がはためいている塔があちこちに見える。
「城郭かな?王宮かな?王宮のほうが素敵だな」と、考えるとはためいている旗に家紋のようなものが描かれていることが分かってきた。
「はは、やはり王宮の方だ!」と、ニンマリしたザ・ドである。
「すると、キレイな王女様がいて、剣に秀でた友がいそうだな」と、連想していくザ・ドであった。
「さて、新しい冒険の始まり始まり!」と、自分で宣言するこの不思議さにも慣れてしまっているザ・ドであった。
「とにかく、この世界でどう過ごしていくか、先ずはどこにブラックサンダー号を隠すかだな。街はずれの打ち捨てられた館や家、小屋でもいいが」
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