第一章 夢枕

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ザ・ドは食事処を出て、石畳を踏みしめながら王宮への坂を登り始めた。 『腹ごしらえはできたが、これからどうしょうか?』と、考えたが、 この場所で何日間過ごすかもわからないことから、先ずは職を探す必要があると思った。 左右に繋がる店や宿屋などを見ながら王宮への坂を登っていく。 『泊まる宿も決めなければな』と、ザ・ドは考えている。 「おい、こら!泥棒ガキ!待ちやがれ!」と、突然大声がして人垣が左右に分かれた間から、黒い影が走り出てきた。 見れば薄汚れたガキが手に果物らしきものを握ってこちらに逃げてくる。 「待ちやがれ!今日こそはとっ捕まえて官憲に突き出してやる!」と店の主人風の男が追いかけてくる。 子供は、ザ・ドの顔を見るとサッとザ・ドの後ろに隠れ、 「お侍さん、後生だから助けてくれ!」と、懇願する。 ザ・ドが着物の袖を引かれて態勢を保とうと腰に力を入れて踏ん張る。 そこに、件の亭主が追いついてきて、 「やい、小僧覚悟しやがれ」と言って、ザ・ドを見て 「おい、お侍、その子を渡してもらおう。 そいつは札付きの泥棒ガキさ、俺んちの果物なんぞをどれだけ盗んだことか、今日こそ捕まえて官憲様に突き出してやる」と、意気込んで話す。 「亭主、見ればたかが果物一、二個ではないか、許してやれ、腹でもすいているのだろうよ、慈悲の心はないのか?」と、亭主に尋ねた。 「慈悲の心だと!今日は一、二個だが、先日は箱ごと盗まれタンじゃぞ!」 ザ・ドは泥棒ガキを見つめた。 「おいらのためじゃないんだ。仲間にやるためだったんだよ、お侍さあん」 と、泣き顔で訴えてくる。 「分かった、わかった。亭主、この果物はそれがしが買おう」 と、頭の中でこの国の通貨が懐の中にあることを念じて、取り出すと先ず 自分でコインであることを確かめ。 「これで足りるか?」と、亭主に手渡した。 亭主は、手渡された金貨を見てびっくりするも。 「へいへい、旦那様それは十分でさー。先日の分を含めても十分です、 ありがとうございますだ」と、手のひらを返したようにペコペコして去っていった。 「へー、お侍さんは見た目とは違い金持ちなんだねー」と泥豪ガキが言う。 「小僧、名前は?」と聞く。 「おいらかい、ボ・タンさ」と、背中を逸らせて言う。 「そんなんに大した名前でもないな」と、ザ・ド。 「でも、チャンが付けてくれた大事な名前さ!」と、ボ・タン。
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