終末調査員

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2018年、世界各地で地球滅亡が早まったと報道された。 原因は地球温暖化。主に、ものを燃やした時に生じる二酸化炭素や、メタンの温室効果である。 温室効果が語られ始めたのは20世紀前半、戦後には地球温暖化が話題になった。また、核も含めた脅威への警告として、世界終末時計もつくられた。国際会議も多く開かれ、2015年には具体的な二酸化炭素削減目標として、パリ議定書が採択された。少しずつではあるが、我らが地球を守ろうとする動きは進みつつあった。 だが、現実は甘くない。温暖化は待ってくれない。 二酸化炭素を減らすためには、ものを燃やしてはならない。しかし、社会を回しているのは、石油を燃やす車であり、多くのエネルギーとなっていたのは、火力発電によって生まれる電気である。それらの供給の停止は、経済活動や日常生活の停止を意味する。政府は、国家、国民のことを考えればこそ、現在とこれからの危険を犯しても、現状を大きく変えることは出来なかった。 長年にわたって切り倒してきた木々を、二酸化炭素を減らすためと急にふやすことはできない。新しいエネルギー源も見つからない。そうしているうちに、増える異常気象。上昇する気温。 間に合うわけがないのだ。地球は、もう、だめだ。 そう結論づけたある国の政府は、秘密裏に世界各国の首脳を集め会議を行った。 2030年、東京の気温が46℃を超えたある夏の日、その内容をふくめた発表がされた。 「地球温暖化を止めるのはもはや不可能である。よって、これより半年後から、同意した全ての国民の”惑星外移住”を開始する。」 突然の発表に人々は動揺したが、反対が起きることはなかった。誰もがどこかで分かっていたのだ。いまさらどうにも出来ない、地球にこれからも住み続けることはできないのだ、と。 政府が数年をかけて準備をしていたため、段取りの説明や宇宙船の造船などの事柄は滞りなく進んでいった。そのなかで、唯一この計画に難色を示していたのは、宇宙について研究していた科学者達である。 せっかく惑星の終わりを体験できるのに、地球からでて機械だけに観測を任せるのは不安が残る。しかし、新しく移住する星の調査のため、数少ないプロフェッショナルを地球に残していくことは出来ない。 ならばどうするのか。 【機械の扱い、環境への順応に長け、鋭い五感もち、正確な調査を行うことが出来る一般人】 この条件に合った人物を地球に残し調査をさせる、科学者達はそう結論を出し、複数の候補生を対象に選抜を行なった。 終末調査員(End Investigator)、と名づけられたその役に選抜されたのが、青代 朔(あおしろ さく)、当時11才の少女である。
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