第二章 井上勇樹の想像記 3 ~家庭編~

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第二章 井上勇樹の想像記 3 ~家庭編~

えーっと。 みんな、今ぼくがどこにいるかわかる? 天下の空想家として知られているぼくも(「何だよ天下の空想家って」「てか知られてないし」と訂正した方、正しい!拍手!)、学校の廊下でばかり想像しているわけじゃない。 なんと今、ぼくは家のベッドにいるのだ! 時刻は午後九時半。 例の職員室の地獄の一軒の後帰ってきて、まあいろいろあって、今、寝てるというわけだ。 いや、正確には寝ようとしていた。 けど、目を閉じるとニコニコしながら「覚悟はできてるかい、井上?」と聞いてくる先生の顔が頭にうかんでなかなか消えない。 こんな時には、どうしたらいいか? ぼくお得意の、想像! いろんなことを空想してるうちに、眠ってしまうんだ。 しかし、何にするか……。 そうだ! 「遊園地の妄想・りたあんず」なんてどうだろう?(「リターンズくらいカタカナで言え」「リターンズなんかなくていいし」とツッコんだ方、正しい!拍手!) よーし、さっそく始めよう! まず、遊園地と言えば? そして、前回の遊園地でやっていなかったことといえば? トランポリィーン! そしてぇ~……プゥール!(「もはや遊園地じゃねえよ」とつぶやいた方、正しい!拍手!) バンジィジャァ~ンプ! 迷路ー! お化け屋敷ー! というわけで、順番にまわっていこう。 まずはトランポリン。 まあまあ楽しい。 三十分ほど楽しんで、別のアトラクションに行く。 次はプールなんだけど、思ったより深くておぼれかけたので速攻であがった。 バンジージャンプ? 一時間待ちだったけど、あまりに怖すぎたから乗る前に逃げ出しちゃった。 迷路は、広い。 あっちにいけば分かれ道、こっちにいけば行き止まりで、さんざん迷った。 三時間経過後、まだ入り口から3メートルの地点にいるのだとわかったぼくは、入り口から退散した。 そして最後、お化け屋敷! おそるおそる足を踏み入れる。 何も起きないんだけど、暗いから怖い。 と、そのとき。 「う~ら~め~し~や~。」 ぬーっとあらわれる髪の長い幽霊。 「っっぎゃああああああああああああああーーーーーーーーー!!!!!!」 自分の悲鳴で我に返ったぼくが見たのは、ドアのところにたっているお母さん……って、え!? 「ゆ~う~き~。」 地の底から聞こえてくるようなお母さんの声に、ぼくの「算数の授業の時には大人しいけど、都合のいい時だけ計算の速い脳内電卓」がフル活動! ぼくの場合、妄想内と現実世界では時間の流れが同じ。 つまり、計算するとトランポリン三十分。 プールは、着替えをふくめると五分ってところかな。 バンジージャンプが一時間待ち。 迷路に三時間、入り口に戻るのに十分。 お化け屋敷は五分くらい。 で、ベッドに入ったのは九時半ということは……。 そーっと時計を盗み見る。 予想通り、午前二時二十分……。 「いつまで起きてるの~~っ!!」 「ぎゃああああああああああああああーーーーーーーーーー!!!!!!!」 この後ぼくが味わった地獄がどのようなものかは、想像してください。             <fin>
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