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「鈍い奴って誰のことだよ?」
「あんたのことよ!!」
友梨奈はずいぶん苛ついているように見える。だけど、その苛つきの理由が僕にはわからない。
「鈍い奴って何だよ!?」
「鈍いから鈍いって言ってるのよ!!」
「訳がわからない」
「だったらもういいわよ」
友梨奈は完全に怒ってしまったようだ。喧嘩したいわけじゃないのに、売り言葉に買い言葉で言い争いになってしまう。僕は少し間を置いてから、
「ごめん」
と謝ると、友梨奈も
「ごめん。私の方が悪かったんだ」
と謝る。
「いや、俺の方が……」
「違うよ、私の方が……」
そこで目があって、互いに吹き出した。
「実はさ、私、今日はちょっと気合を入れて来てたんだ。試合が終わったらすぐにシャワーを借りて浴びて、色付きのリップクリーム塗ってさ。今日のために買った胸が大きく見えるブラジャー着けて、お姉ちゃんから借りてきた香水を振ってね。どう? いつもより可愛いでしょう?」
「うん。可愛いと思うよ。だけど、何で?」
僕の問いに、友梨奈は少しだけ頬を膨らませる。だけど、目は怒っていない。本当に怒っているわけではない証拠だ。
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