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「そうか。頑張ってるんだなあ……」
「まあね。私もこれが最後の大会だし、行けるところまでは行きたいし。あ、じゃあ、そろそろ行くね」
「ああ。頑張れよ」
僕はそう答えて、駆け去ってゆく友梨奈の後ろ姿を眺める。
友梨奈とは小学生の頃からの付き合いだ。小学三年生の二学期の初め、友梨奈が僕の通う小学校に転校してきた。先生と並んで教壇に立つ友梨奈は、ひどく生意気そうな顔で教室中を見回した。第一印象でこいつとは絶対に仲良くなれないと思ったのを、今でもはっきりと覚えている。
だけどその時、教室の中で空いているのは僕の隣の席だけだった。そこには一学期まで、僕の親友が座っていたのだが、夏休みを目前にして転校していった。詳しい理由は覚えていないが、あまりにも突然の転校だったから、ずいぶん衝撃を受けたのを覚えている。
その親友に代わって僕の隣に座ることになった友梨奈。だけど、僕と友梨奈はしばらく、一言も口をきかなかった。口をきかないと決めていたわけではないが、何となく機会を失って、時間だけが過ぎていったのだ。
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