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僕はそのまま、友梨奈が試合をしている剣道場の方に向かった。剣道場に入ると、紺色の剣道着を着た群衆の中に、真っ白な柔道着がひどく目立つ。ここでも居心地の悪さを感じないわけにはいかなかったが、ちょうどその時、友梨奈の試合が始まった。僕は隅の方でこっそりと友梨奈の試合を見ることにする。
試合開始の合図とともに、気合の入った声が剣道場の中に鳴り響く。足が床を擦る音と、竹刀がぶつかりあう音が聞こえてくる。それらの音は、やがて足が床を踏みつける音に変わり、竹刀が面や籠手を打つ音へと変わっていく。試合は一進一退を繰り返していた。お互いに相手に攻め込んでいくが、なかなか有効打を奪うことができずにいる。僕はじれったさを感じるが、試合をしているのは友梨奈なのだからどうしようもない。僕にできるのは、せいぜい精一杯声を出して応援することくらいだ。
やがて、試合終了のブザーが鳴った。結局、お互いに一本も取れずに試合は終了し、両選手は開始線の位置まで下がる。試合の結果は、審判による判定に委ねられた。僕は固唾を飲んで結果を待つ。やがて、主審と二人の副審が、三人揃って赤い旗を上げた。残念ながら友梨奈の負けだ。僕はそれを確認してから剣道場を静かに後にした。
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