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「だって、そうでしょう? あんたは東京の大学を目指してる。だけど、私は地元の大学を目指してる。あんたの成績だったら、志望校にはまず間違いなく合格するでしょう? 小学校からずっと一緒だったのに、ついに離れ離れになっちゃう」
「まあ、そうは言っても、長い休みにはこっちに戻ってくるし」
「毎日顔が見られるのと、たまにしか見られないのじゃ違うよ」
僕には、どうして友梨奈がそんなことを言うのかわからない。だけど、僕の目に映ったのは、友梨奈の目から溢れる一筋の涙だった。
「泣いてるの?」
「泣いてない」
「嘘つけ。泣いてるだろう」
「泣いてないもん」
友梨奈はそう言いながら、剣道着の袖で涙を拭った。僕は友梨奈の涙の理由もわからずに、ただ見ていることしかできない。
しばらくの沈黙が続いた後で、友梨奈が再び口を開いた。
「ねえ、もしよかったら、今日は一緒に帰らない? たぶん、柔道も剣道も、試合が終わるのは同じくらいの時間だろうから」
「構わないけど。でも、お前の方は大丈夫なのかよ? 剣道部はいつも試合が終わったら、みんなで食事に行くのが恒例だろう?」
「大丈夫。こっそり抜け出すから。私一人がいないくらい、何の問題もないわよ」
「わかった。じゃあ、終わったら、正門の前で待ってるよ」
「了解、私の方も、先に終わったら、正門の前で待ってる」
僕たちはお互いに頷きあい、それぞれの道場に戻った。
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