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表彰式も終わり、大会が完全に終了してから正門に行くと、防具や剣道着を入れたバッグと竹刀を背負った友梨奈が制服姿で待っていた。友梨奈の周りには、剣道部のチームメイトは誰もいない。どうやら、うまく一人で抜け出せたようだった。僕は友梨奈に駆け寄り、声をかける。
「おまたせ。だいぶん待たせた?」
「ううん。私もちょうどいま来たところだから」
「そう。じゃあ、帰ろうか」
「うん」
僕たちは並んで駅に向かって歩き出す。駅へと向かう道は、同じ大会に出場していた選手たちで溢れている。周りにチームメイトがいないか、ついつい視線があちこちと動いてしまう。友梨奈も落ち着かないようで、きょろきょろと辺りを見回している。このまま駅に向かって歩いていけば、この状況から抜け出すことはできないし、おそらく電車の中でも同じような状態になるだろう。
「ねえ、ちょっと時間をずらして駅に行こうよ。このままじゃ落ち着かないしさ」
「構わないけど、どこで時間を潰すんだよ。柔道着やら剣道の防具やらを持って喫茶店なんかに入るのも、ちょっと恥ずかしいと思うけど」
「だったら、この近くに公園があるから、そこに行こうよ。多分、三十分もすれば、みんな帰っちゃうだろうから」
「わかった」
僕が答えると、友梨奈は公園へ向かって歩き始める。僕はその後を追って歩き始めた。
公園に行く途中、僕と友梨奈は自動販売機で一本ずつジュースを買った。そして、公園に着くと、ベンチに並んで腰を下ろし、栓を開けた。
「ねえ、乾杯」
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