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Youth
相手の姿が消えたと思った瞬間、僕の体がフワリと浮いた。次の瞬間、派手な音とともに僕の体は畳に叩きつけられ、同時に、主審が右手を真上に上げて、
「一本!!」
と大きな声で宣言する。
あまりにも見事な背負投げで、僕は体を捻って躱すこともできなかった。これで高校最後の大会が終わる。僕が立ち上がり、開始線まで下がると、主審が相手の勝利を告げた。僕は礼をしてから試合場を出て仲間の元に戻る。
「残念だったな。だけど、よく頑張った」
顧問の新庄先生が慰めの言葉をかけてくれる。その言葉で、負けたという実感が急激にこみ上げてくる。
「押忍!!」
僕はそう答えるだけで精一杯だった。悔しさで涙が出そうになった僕は、トイレに行くふりをして道場を出る。今はとにかく一人になりたかった。泣いている姿など、誰にも見られたくない。
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