最終章◆初恋の結末

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「……ねえ朱莉ちゃん、私まだ疑ってるんだけど、本当にあのときの記憶、全然ないの?」 「ないよ。どうして?」 「あのときのこと話すとき、朱莉ちゃん、少し寂しそうにするから。何か覚えてるのかなって」 「何も覚えてないよ。覚えてたら、警察の人に話してるし」 「そっか。あ! そういえば、あの“ヴァンパイアの館”、ついに来週取り壊しなんでしょ? 知ってた?」 「うん、知ってるよ。市の人がしょっちゅう視察に来てたから。本当、ついに、だよね」 「やっぱり、事件のことがあってから、役所の人も覚悟決めたって」 ふふふ、と笑う彼女に、私もうっすらと笑みを浮かべた。 思い出の詰まったあの館が取り壊される。つらかった昔のことを思い出すと複雑な気持ちになり、カフェオレのストローを吸った。 「……で、朱莉ちゃん。私、一番肝心なこと聞けてないんだけど」 「え? 何だっけ?」 「加賀先輩だよ! 今、どんな関係なの?」 私はストローを咥えたまま目をパチパチさせた。 お昼に会っていた先輩の姿を少し思い出した。 「どんな関係って?」 「とぼけないの! ……告白されたんでしょ?」 「……うん。びっくりした」 「で!? 断ったって本当なの!? あの加賀先輩を!」 「……うん」 「どうして?」 「……んん、どうしてだろう」
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