250人が本棚に入れています
本棚に追加
/209ページ
あの事件の直後、先輩はゼミに復帰した私を、泣いて迎えてくれた。素直に嬉しくて、救われた気持ちになったことを覚えている。
“酷いこと言ってごめん。あれが最後になるんじゃないかって、いなくなってからずっと後悔してた”
あのときそう言われて、知らなかっただけで、私のために泣いてくれる人がちゃんといるんだと思った。
「それでも加賀先輩、落ち込んでなかったね」
「前向きな人なんだよ。太陽みたいな、ね」
「……じゃあいいじゃん加賀先輩で。なにが不満だったの? 理由を言いなさい! 理由を!」
「うーん……忘れられない人がいるんだよね」
「誰!?」
「覚えてないの。でも、きっといつか会える気がして」
エミちゃんは煮え切らない顔をしたけれど、ただ笑顔を浮かべるだけの私を見て、フッと明るいため息をついた。
「なにそれ。よく分からないけど、その人と会えるといいね」
「うん」
「あ、職場近いんだし、就職しても私とも会ってね! 近況報告とか!」
「もちろん!」
最初のコメントを投稿しよう!