エピローグ

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 喧嘩なのか、意気投合したのか、盛り上がる猛と、ミハイルと、芳人と、リザを置いて、志貴が望をそっと庭園に連れ出した。  夕食時で誰もいない庭園の木の影で、志貴が望をそっと抱き寄せる。 「お帰り。望。戻ってきてくれてありがとう」 「ただい・・・・・・ま」  言いかけて涙が零れ落ちた。 「あのドレスを試着した日に、望に言った言葉を覚えてる?」  プロポーズされた時のことだ。忘れるわけがない!   望は志貴の顔を見ながら、昨日聞いた言葉のようにすらすらと答えた。 「ここら辺をどう変えていくのか、志貴さんが話してくれた時、私が時代絵巻の案を出したら、志貴さんがすごいって褒めてくれて、俺の傍でずっと支えてくれってプロポーズしてくれたわ」 「その通りだ。もう一度言うよ。これからも、ずっと傍にいて、俺を支えてくれるね? 」  望は涙をぽろぽろこぼしながら、頷いた。志貴の手が望の顔に添えられて、息がかかるほど顔を寄せると、どちらともなく愛してると囁き合って唇を重ねた。  木にライトを遮られ、二人の姿はまるで美しい影絵のように見える。  その二人を祝福するように、頭上で星が瞬いた。  今夜Zi;angu streetは、どんな夢を宿泊客に見せるのだろうか?   平安時代のお姫様になる夢か、戦国時代に馬を駆って突撃する夢か、はたまた、雅な大奥で繰り広げられる女同士の戦いか・・・・・・  望は、Zipangu streetを訪れる人々が、ずっとずっと幸せな気分でいられますように、そして自分も志貴と一緒に幸せでいられますようにと、深くなる闇の中に煌めく星に願いをかけたのだった。                                                     了
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