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李に山の権利が渡ったら大変なことになると、ミハイルは言っていた。ということは、まだ山の所有者は対木克己の父にあるということだ。李に土地を売らないように何とか話を持っていけないだろうか? 望はタクシーの中で必死に考えたが、ミハイルはその大変になる理由を明かそうとはしなかった。確証がないのに、どうやって話をしたらいいのだろう?
望が考えているうちに、タクシーは長い塀に囲まれた家の前に到着した。
芳人は後で迎えに来ると言ってくれたけれど、もし志貴に何かあったら、ここに来るまでに時間がかかるだろう。望は回りを見渡し、他に民家が無いのを確認すると、タクシーに待っていてくれるように頼んで、門に向かう。
塀沿いに歩き、頑丈な門前に立った望は、門が開いているのに違和感を覚えた。
9月に入ったばかりで、まだ18時はかろうじて明るいとはいえ、あまりにも不用心すぎる。
インターフォンを押すと、カメラの前の明かりが点って望を照らすが、応答がない。
開きっぱなしの門から、中を覗き込んだ時、低いうめき声が聞こえたような気がして、望はひやりとしたが、タクシーが待っていてくれることに勇気を得て、庭へと足を踏み入れた。
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