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敷石に沿って望が進むと、左手に日本庭園が見える。大きな岩を山などに見立て、水の代わりに玉砂利を敷いた池に目を奪われそうになるが、敷石が続く右手の方から聞こえるうめき声に我に返り、望は古い日本邸宅に向かって進んでいった。
玄関へと向かう敷石が、灌木を回り込んだ時、その陰に初老の男性が倒れているのが見えた。望は駆けよって男性を抱き起すと、男性がしきりに何かを繰り返す。
「対木さんですね? 大丈夫ですか? 救急車を呼びますか?」
望の呼びかけに、意識を取り戻した男性が辺りをぼんやりと見回すと、急に何かを思い出したように、望の手を振り払って立ち上がりかけ、ふらついて再び地面に座り込む。
「対木さん、一体どうなさったんですか? 」
望が対木の背中に手を添えて、心配そうに顔を覗き込むと、対木は望の腕を縋るように掴んで助けを求めた。
「克己に、息子に殴られて、転んだ時に庭石で頭を打って、気を失っていたらしい。それよりも、克己が土地の登記済権利証を持って行ってしまった。あいつは外国人に脅されて山を売る気だ。あなたが誰だか知らないが、灯台に行くと言っていた。どうか止めてください」
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