ひとつめ 透明なグッピー

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エミに久しぶりに先生の話をすると「覚えてるよ」と言った。 エミは小さいときからずっと一緒にいる、僕の恋人だ。 「先生は僕の初恋の人なんだ」 「ふーん、そうなんだ。まぁでも、綺麗だったもんね。誘拐されたんだっけ?」 「誘拐?」 「ほら、突然いなくなったじゃない?お母さんがずっと怖いわって家で言ってたし、けっこう噂になってたよ?」 知らなかったの?とエミは僕を覗き混んでくる。 「知らなかった」 唖然としてしまった。まさか、先生が誘拐されていたとは。 そういえば、「先生に会いたい」と泣いた僕に大人達は「もう会えない」としきりに言っていたような気がする。 幼いときのぼんやりした記憶が、涙を浮かべたときの歪んだレンズが、何か大切なものを忘れたように脳裏に浮かんで、またすぐに消えていった。
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