Prologue: THE UNTOUCHABLES

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 だから、『大気汚染』を契機としたこの五十年で地上波の民放放送局は三社がテレビ部門を閉鎖し、インターネットにその活動基盤を移し、より自分達がやりたい独りよがりの番組配信をするだけの存在に成り下がっているのだ。少なくとも私が子供の頃は、もっとテレビの力は大きかった筈なのに。  内心で呆れつつ、私はうんざりしながらも律儀にメディアの質問に答え、対応した。  そうして話の締めとして、フジカズとの今後の企業連携についての発表をする。 「私も詳細を存じませんが、フジカズさんによる今後の大気研究の一成果として、近々重大な発表をすると報告を受けております」  メディアと、私達を遠巻きに観察する聴衆が少しざわめいた。そのざわめきが落ち着くのを待ってから、私は言葉を続ける。 「フジカズによる大気研究の発表との事ですので、恐らく大気局からの公式発表が先になるかと思います。現在衆議院とも綿密に連携を取ってプロジェクトを進行させておりますので、続報をお待ち下さい」  ご傾聴ありがとうございました、と私は言葉を締めくくり、壇上から離れる。一部聴衆から拍手が控えめに起こる中、私の後を司会の男が引き継いだ。  私はスピーカーに接続したワイヤレス端末の通信を切り、檀上を降りて一息をついた。秘書は、そのマスクの上からでも分かる抑えきれない笑みを浮かべて私を出迎える。 「お疲れ様でした」 「どうだったかな」 「バッチリです」  少しフランクな話し方をして、彼女は「だってほら」と少し離れた方を指差した。     
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