Prologue: THE UNTOUCHABLES

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 だから今日の会見で、フジカズとの業務提携と彼らが抱えるプロジェクトの支援発表も、何も後ろめたい目的など無い。経理に回さない運用資金が増えるというだけの話だ。それは私や一部職員の個人的な利益には決してならないものだし、活用する事で市民の生活を豊かにするものだ。何処に責められる謂れがあるだろう?  私は吸収缶の残量メモリ(これもフジカズが考案・開発したものだ)を確認し、装備する。秘書もそれに続き、自分のマスクを当てた。彼女のマスクは旧モデルで、吸収缶も新型に対応していない。だが、常日頃から私の身辺の世話をしてくれている彼女には、次の新型が支給されればいの一番に私からそれを贈呈しようと思っていた。 「時間はどれくらい取ってあるんだっけ?」  廊下を歩きながら問うと、二十分です、と秘書は答えた。「その後、質疑応答に十分程度を予定しています」 「そんな長い時間必要かな」 「スピーチや政策宣言も勿論ですが、半分近い時間をフジカズとの企業提携プロモーションに割いています。遠回しにでも、販促は向こうもどうしても必要でしょうし……」  そうだな、と私は上の空で頷いた。研究職の道へ進んだ友人と、先月久し振りに飲みに行った時の事を思い出していたのだ。とにかく、資金も人手も回ってこない、と。来ないのではなく、回してもらえないのである。     
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