Chp.1: WATCHMEN - 1

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Chp.1: WATCHMEN - 1

 まだ完治していない、うっすらと残った顔の痣に無意識に手が伸びる。勉強で手を動かしている間も、怖いもの見たさ、とでも言うのだろうか、固まったかさぶたを剥がしたくなる様な感覚と似たものを感じた。なかなか治らないなあ、この前見たアクション映画の主人公が終盤でこさえた痣に似てるかも、とか無駄な事を考えてから、ペチンと頬を叩いて集中し直した。  古い映画が好きだ。今の映画撮影技術では決して見られない試みや挑戦的な技法が幾つもあり、斬新な発想に目が回る。女の子で映画鑑賞が専らの趣味だなんて口にするのは恥ずかしいから止めなさい、とお母さんは言う。小さい頃から言われるものだから、自然と誰かに自分の趣味について口にする事は止めていた。  それでも、映画を観る事それ自体は決して止めなかった。そんな私を、お母さんは少し心配そうに見ている事も多いけれど、流石に近年では口では何も言わなくなった。尤も、受験シーズンの始まった最近はまたちょくちょくと小言を言うようになったけれど。     
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