Chp.2: V for VENDETTA - 1

1/13
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/228ページ

Chp.2: V for VENDETTA - 1

 レベル2住居棟には、屋内に最低限必要になるであろう施設だけは設けられている。病院もその一つだ。特に私は良く世話になる施設なので有り難いのだが、いかんせん人が押し寄せる。私の記憶にある幼少期の頃の病院のそれと比にならない程だ。  平均寿命と定年退職の年齢が当時よりも引き下げられている事も手伝い、どの職も人手が不足している。だが、高齢者の多くを対象としている介護福祉系の施設は度を越している様に思えた。貧困から脱しようとしている努力家の若者は、役人か医者になるのが最もメジャーなパターンに思えるのだが、それでも敷居は高いらしい。五千人以上を収容しているこの住居棟に対しクリニックや病院は合計して十に満たないし、大きな病院施設でも医師は十人居れば多い方だと言われているらしい。  そんなものだから、病院に用事がある時は大抵半日か、丸一日時間を浪費しなければならない事も珍しくない。瑞希の世代から下は既に医療補助が受けられない為、余程の大怪我や大病でなければ家で市販薬を買って安静にする以外に治療法が無いのが実情だった。  必然的に、病院は老人が多くなる。それでも、私程の高齢者は居ない。     
/228ページ

最初のコメントを投稿しよう!