おもわずポロリと

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おもわずポロリと

 近所に住む小学四年生の男の子、たくや君は今日も元気だ。  大きな声でご挨拶。  だけど私には挨拶ではなく、可愛げのない一言をくれる。 「おい、ブス」  確かに私は可愛くない。だけど、羽菜(はな)って名前がある。  たくや君を無視して歩いていくと、腕を掴まれた。  意外と力強いのね。  振り向くと、真っ赤な顔をしてたくや君が私を見上げていた。  無視したことを怒っているのかしら。  だけど私だって怒っているんだよ? 「羽菜、無視をするなよな」 「それならブスって言わないで」  たくや君が言い返そうとして声を詰まらせる。    またブスって言おうとしたんでしょ。  ため息をつき、行くねと歩き出そうとした、その時。 「好きな女に『可愛い』なんて素直に言えるかっ! ……あっ」  と近所に響きわたるほどの大きな声で、たくや君が私に言う。  なにそれ……。  じわじわと頬が熱くなってくる。  思わず口にしてしまった事に、たくや君も顔を真っ赤にさせた。
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