『 Will you marry me?  』by.eight

1/1
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

『 Will you marry me?  』by.eight

【かわりのことば 『本屋にでも行ってくるか』】 「旨いな、これ」 もごもごしながら手に持つ残りのバウムクーヘンを見詰める彼。 「それね、三上さんの結婚式の引き出物なの。美味しいでしょう?」 お揃いのマグカップを二つテーブルに並べる。 一つはコーヒー。 もう一つは私の紅茶。 「ああ、この前の日曜だっけ」 「そう。三上さんのドレスね、スッと細身で素敵だったの。背が高いからとっても似合ってたんだよ。幸せそうで……すごく、良い結婚式だった」 数日前を思い返す。 会社の後輩の結婚式は、ウエルカムボードやガーランド、それにフォトプロップスが手作りでとても温かみがあった。 私なら、どんな結婚式にしたいだろう……。 木々に囲まれた小さなレストランのガーデン。 お姫様みたいにふわふわなレースのドレス。 黄色とオレンジを主にしたブーケ。 隣の彼は緊張する私の手を優しく繋いでくれる。 一瞬頭に浮かんだ私と彼の未来予想図。 付き合ってもう五年。 でも未だにその言葉を彼は私にくれない。 あと何人の後輩に先を越されちゃうのかな。 小さなため息を彼に気付かれないように吐く。 「うん、旨かった」 マグカップをコトっといわせてテーブルに置く。 コーヒーの香りがふわんと漂う。 「さて。本屋にでも行ってくるか」 おもむろに彼が立ち上がった。 ? 「珍しいね、普段本なんて読まないのに」 「俺のじゃない。お前の」 ?? 「私?私別に今読みたい本なんて無いよ」 「いや、ある」 「え?……や、無い、けど」 「いいから、行くぞ」 「え、いや、だから……え?ちょっ、待っ」 紅茶がまだ残っているというのに、強引に腕を掴んで連れられていく。 彼の言動に、訝しく眉を寄せたまま。 本屋の雑誌コーナーの前で、私が嬉し泣きをするまで あと二十分。 (結婚しよう) by.黒羽瑛人様 https://estar.jp/users/142622576
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!