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『 Will you marry me? 』by.eight
【かわりのことば 『本屋にでも行ってくるか』】
「旨いな、これ」
もごもごしながら手に持つ残りのバウムクーヘンを見詰める彼。
「それね、三上さんの結婚式の引き出物なの。美味しいでしょう?」
お揃いのマグカップを二つテーブルに並べる。
一つはコーヒー。
もう一つは私の紅茶。
「ああ、この前の日曜だっけ」
「そう。三上さんのドレスね、スッと細身で素敵だったの。背が高いからとっても似合ってたんだよ。幸せそうで……すごく、良い結婚式だった」
数日前を思い返す。
会社の後輩の結婚式は、ウエルカムボードやガーランド、それにフォトプロップスが手作りでとても温かみがあった。
私なら、どんな結婚式にしたいだろう……。
木々に囲まれた小さなレストランのガーデン。
お姫様みたいにふわふわなレースのドレス。
黄色とオレンジを主にしたブーケ。
隣の彼は緊張する私の手を優しく繋いでくれる。
一瞬頭に浮かんだ私と彼の未来予想図。
付き合ってもう五年。
でも未だにその言葉を彼は私にくれない。
あと何人の後輩に先を越されちゃうのかな。
小さなため息を彼に気付かれないように吐く。
「うん、旨かった」
マグカップをコトっといわせてテーブルに置く。
コーヒーの香りがふわんと漂う。
「さて。本屋にでも行ってくるか」
おもむろに彼が立ち上がった。
?
「珍しいね、普段本なんて読まないのに」
「俺のじゃない。お前の」
??
「私?私別に今読みたい本なんて無いよ」
「いや、ある」
「え?……や、無い、けど」
「いいから、行くぞ」
「え、いや、だから……え?ちょっ、待っ」
紅茶がまだ残っているというのに、強引に腕を掴んで連れられていく。
彼の言動に、訝しく眉を寄せたまま。
本屋の雑誌コーナーの前で、私が嬉し泣きをするまで
あと二十分。
(結婚しよう)
by.黒羽瑛人様
https://estar.jp/users/142622576
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