余命宣告

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昔は発達障害に対する理解度がないに等しかった。クラスに一人か二人くらいそういう子がいても、変わった子としてしか見られなかった。当時は一クラスの人数も多かったから担任にとってお荷物でしかなく。だから、文字の読み書きが出来ない、簡単な計算が出来なくても真摯に向き合ってくれなかった。 空気が読めない、話しを合わせられない、大人数の中に入っていけない。いっぺんに言われパニックを起こしても見て見ぬふりで。 しまいには五月蝿いから廊下に立ってろと教室から追い出された。 大人になって、息子が発達障害だと診断が下りてから、自分も発達障害という診断が下りて、あぁ、そうなんだ。だからかと納得した。 小学五年のとき、同じクラスにみよちゃんという子が転入してきた。 一人だけ浮いていた私に唯一優しくてくれたみよちゃん。彼女もまた発達障害で、前の小学校でいじめられ引っ越してきたと知ったのは随分あとのこと。 みよちゃんが二十三才で結婚するまでずっと一緒の、大の仲良し。当時はまだボーイズラブ(BL)でなくやおいといわれていたけど、アニメや漫画、ライトノベルを読んで、2次作品を書いて、同人誌を作ったりして盛上って。いわば心の友だった。 信販会社で審査の仕事をしているというご主人は転勤族で、しだいに連絡も取れなくなった。 そして15年が流れ、ある日突然、実家に彼女から電話が掛かってきた。 「実はね・・・末期の胃ガンで余命宣告を受けたの。子供がなかなか出来なくて、主人とは、その、協議離婚調停中なの。それで、彼、部下と長い間不倫してて、子供が、出来たみたいなの」 電話に出た兄嫁を私と勘違いし、辛い胸のうちを包み隠さず話してくれた。 兄嫁から連絡を貰い、彼女とすぐ連絡をとった。久し振りに聞く彼女の声は疲れ切っていた。 「まなちゃんの側で死にたいよ」 涙ながら訴える彼女を放っておけなかった。2年前に夫の父を彼女と同じ末期の胃ガンで亡くし、10年前にも仲の良かった友人を自死で失い辛い思いをしたから。 だから、どうにかして彼女を助けたいと思った。
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