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それから数日後。
「みんなには内緒だよ」と、タケヒコ君が、ピカピカ光る石を私にくれた。
「これ何?」
貰った石を手のひらで転がしながら、私はタケヒコ君に尋ねた。
「勇者の石。これ持ってると強くなれるよ」
「勇者の石かぁ。なんか強そう」
その石をギュッと握りしめると、なんだか本当に力が湧いてくるような気がした。
「ありがとう。大切にするね」
タケヒコ君が、顔をくしゃくしゃにして笑った。
それきり、タケヒコ君は、私たちの前から姿を消した。
朝の会で、先生が、タケヒコ君は遠い町に引っ越したのだと教えてくれた。
その日の夜、両親が、タケヒコ君の工場の話をしていた。
「倒産」という言葉が耳に入ってきたが、幼い私には理解できなかった。
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