てのひらの物語

7/8
前へ
/8ページ
次へ
「流れ星に何を願いますか」で始まって、「君が目覚めるまでは」で終わる物語 image=513365845.jpg 「流れ星に何を願うの?」 「決まってるわ、ウィルトールの──」 「俺?」  夜空を仰いでいたきみが振り返った。その頬は見る間に赤く染まっていく。続く言葉をしばらく待ってみるが、彼女の口はただぱくぱくと開いては閉じてを繰り返すだけ。 「俺の、何?」  視線を絡ませたまま小首を傾げてみれば、少女はいよいよ慌て出した。 「だから、あの……、そ、そういうウィルトールこそ、願いはなんなの?」 「俺の願い?」 「聞いた方が先に言うべきだわ」  眉尻を上げまっすぐ見上げてくるアデレード。腰に両手を当て、唇を尖らせる可愛らしい様にはつい苦笑が漏れそうになる。  だが思案気に拳を口にやった。今貼りつけるべきはあくまで〝困ったような〟笑み。 「参ったな。願い事は人に言ったら叶わないと聞くし」 「え!?」  少女が口許をぱっと手で覆った。  驚愕が過ぎると次にきたのはどうやら怒りのようで、その後は「ウィルトールひどい!」とまるで悪人扱いだった。堪えきれずに破顔し、あとは素直に謝罪の語を口にした。  星はきっと手に入るだろう。望んだものと手にしたそれは始めは違うかもしれないけれど。たとえ差があろうとも、歩み寄りは可能なはずだから。  ならば俺はよき〝兄〟でいよう。夢見るきみが目覚めるまでは。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加