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「流れ星に何を願いますか」で始まって、「君が目覚めるまでは」で終わる物語
「流れ星に何を願うの?」
「決まってるわ、ウィルトールの──」
「俺?」
夜空を仰いでいたきみが振り返った。その頬は見る間に赤く染まっていく。続く言葉をしばらく待ってみるが、彼女の口はただぱくぱくと開いては閉じてを繰り返すだけ。
「俺の、何?」
視線を絡ませたまま小首を傾げてみれば、少女はいよいよ慌て出した。
「だから、あの……、そ、そういうウィルトールこそ、願いはなんなの?」
「俺の願い?」
「聞いた方が先に言うべきだわ」
眉尻を上げまっすぐ見上げてくるアデレード。腰に両手を当て、唇を尖らせる可愛らしい様にはつい苦笑が漏れそうになる。
だが思案気に拳を口にやった。今貼りつけるべきはあくまで〝困ったような〟笑み。
「参ったな。願い事は人に言ったら叶わないと聞くし」
「え!?」
少女が口許をぱっと手で覆った。
驚愕が過ぎると次にきたのはどうやら怒りのようで、その後は「ウィルトールひどい!」とまるで悪人扱いだった。堪えきれずに破顔し、あとは素直に謝罪の語を口にした。
星はきっと手に入るだろう。望んだものと手にしたそれは始めは違うかもしれないけれど。たとえ差があろうとも、歩み寄りは可能なはずだから。
ならば俺はよき〝兄〟でいよう。夢見るきみが目覚めるまでは。
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