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女は目を丸くして驚いた。
大の大人の口からまさかの答えが出てきたからだ。どう返せば良いか迷っていると、
「いや、信じられなくてもしょうが無い。でも本当なんだ。あいつは大学時代に死んでるんだよ。ちょうど一ヶ月後が、七回忌だ。」
坊主の男が話し始めた。
「元々あいつと俺たちは一緒に居たんだけど、色々あってあいつが死んで……でもその後もあいつは俺たちに付いてくるんだよ。しかも念が強いからなのか、霊なのに触れるし、本当は会話もできる。でも、今はもう何も話さないんだよ。」
彼らの口をつぐんで、苦虫をかみつぶしたような表情を見ると嘘をついているようではなかった。
しかし百歩譲ったとして、会話ができるどころか触ることもできる幽霊とは聞いたことがない。
いまだ半信半疑でいると、細身の男がゆらゆらと帰ってきた。
改めてこの男を見ると、ばさついた髪の毛、ひどい目のクマ、青白っぽい顔色をしている。
にわかには信じがたいが状況証拠だけだと幽霊でもおかしくない。
けれども信じるには、最後にもう一つ後押しが欲しい。
そう思った女は細身の男にこう聞いた。
「あなたって、幽霊なの?」
その途端、細身の男はクルッとこっちを向いた。そして、ゆっくりと首を縦に振った。
女はしぶしぶ信じることにした。
この後、全員と連絡先を交換した後、この日は解散した。
しかし女は幽霊のことが気になって仕方なかった。
家に帰ると早速、幽霊に連絡をしてみた。
“次は二人でご飯でもどうですか?”
メールを送ると、一時間後には返信が来た。
幽霊はメールを打つこともできるらしい。
“僕と関わるのは止めた方が良いですよ。”
それだけだった。女は諦めなかった。
触れる・話せる幽霊への知的好奇心が強かったのだ。
何度もメールを繰り返すうち、少しずつだが心を開いてくれたのか、初対面から三日後、二人で会うことになった。
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