28人が本棚に入れています
本棚に追加
前回とは違う、感じの良いバーで待ち合わせをして仕事終わりに落ち合った。
幽霊はこないだと変わらず調子の悪そうな見た目でやってきた。
女は、いざ誘ってみたは良いけど前回何も話していない幽霊に対して、どう会話をすれば良いのか悩んでいた。
いきなり霊について質問をするのは失礼と考え、適当に身の上話を聞いてみた。
すると、案外ポロッポロッとだが口を開いて話しをしてくれた。
内容は、最近のことはほとんど話さず、幼い頃の話や小学校の話辺りが多かった。
昔の話をする彼の表情は、女には少し和らいでいるようにも見えた。
女自身の話もしながらの会話はとりとめも無い中身だったが、意外なことに楽しかった。
それこそ時間と当初の目的を忘れてしまうほどに。
女は人としての彼に惹かれ始めていた。
つい話し込んでしまい、いつのまにか終電の時間に。
急いで会計を済ませ店を出ると、男が今日最も大きな声で一言、
「今日は、人生で一番楽しい日でした。」
そこまで言われると女の方が少し恥ずかしく感じてしまう。
駅で別れ際、彼から小さな声で“ありがとう”と聞こえた気がした。
最初のコメントを投稿しよう!