二話目 「触れる幽霊」

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 前回とは違う、感じの良いバーで待ち合わせをして仕事終わりに落ち合った。 幽霊はこないだと変わらず調子の悪そうな見た目でやってきた。 女は、いざ誘ってみたは良いけど前回何も話していない幽霊に対して、どう会話をすれば良いのか悩んでいた。 いきなり霊について質問をするのは失礼と考え、適当に身の上話を聞いてみた。 すると、案外ポロッポロッとだが口を開いて話しをしてくれた。 内容は、最近のことはほとんど話さず、幼い頃の話や小学校の話辺りが多かった。 昔の話をする彼の表情は、女には少し和らいでいるようにも見えた。 女自身の話もしながらの会話はとりとめも無い中身だったが、意外なことに楽しかった。 それこそ時間と当初の目的を忘れてしまうほどに。 女は人としての彼に惹かれ始めていた。  つい話し込んでしまい、いつのまにか終電の時間に。 急いで会計を済ませ店を出ると、男が今日最も大きな声で一言、 「今日は、人生で一番楽しい日でした。」 そこまで言われると女の方が少し恥ずかしく感じてしまう。 駅で別れ際、彼から小さな声で“ありがとう”と聞こえた気がした。
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