二話目 「触れる幽霊」

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 この三週間で知り合った男が立て続けに死んだ。 しかも一番仲が良くなりかけていた幽霊の彼はどこかに行ってしまった。 女は心が疲れているのに、第一発見者として警察の取り調べを受けなければならなかった。 長い長い聴取は憂鬱でしたかなかったが、なにやら担当の警察官の様子がおかしい。 言いたげなことがあるみたいだが言い渋っているみたいだ。 「何かあるんですか?」曖昧に聞いてみると、ようやく警官が口を開いた。 「あの~、実はですね、今回殺された男性と、先週先々週に殺された男性二人、彼らに共通する人物がいるんですよ、」 女はすぐ、幽霊の彼だと思った。だが彼はもう……。 「その共通する人物、まあ男性なんですが、昨日自室で死んでいるのが発見されました。死後間もない状態でした。」 初め、正しく言葉を飲み込めなかった。 なぜなら彼は数年前にすでに亡くなっているのだから、死体が見つかってもおかしくないからだ。 だが、おかしいことにすぐ気付いた。 死後一ヶ月?彼は大学時代に亡くなり、今年で七回忌だと聞いていた。 それならば昨日まで生きているはずがない。女は事情を話そうと思った。 「え、あの信じてもらえないかも知れないんですけど、 彼、自殺した友人達や自分でも幽霊だと言ってましたけど。」 警官は、話し始めた。 「あー、それについてなんですが、私たちの調べによると、殺された三人は昨日自殺した男性は中学校からの同級生だったんですが、ずっと男性のことをいじめていたようです。靴や教科書を隠されたりボコボコに殴られたり、かなりひどいものだったようで、その中でも一番ひどかったのが、大学入学前、いじめの一環で三人は生前葬を行なったことです。それから男性のことを“幽霊”と呼んでいたみたいなんですよ。」 女は言葉が出なかった。 彼は触れて会話ができる幽霊などではなかった。 幽霊ではないのに幽霊のように扱われ、からかわれているだけの、普通の生きている人間だったのだ。 「そうしたいじめが原因で、男性は他の三人を殺害後、自らの命を絶ったと言うわけです。」 一応女に配慮してか、落ち着いたトーンで話をする警官。 女はショックが大きすぎていた。 全ての経緯を聞いた後、聴取は終了し、女は家に帰された。
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