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序章
『夜空 星』は小学生4年生である。
赤いランドセルを背負って伏し目がちに廊下を歩いている黒くて長い艶やかな髪、整った顔立ちに紫色の透き通った瞳の女の子。
ただ、周りを行き交う女の子達よりも明らかに秀でている容姿なのに、着ている服は黒く茶色い地味なズボンを履いている。
その足取りは重く、教室の前に来て扉に手を掛けた彼女は大きくため息を漏らす。
彼女には深刻な悩みがあった。
それは……。
「うわっ、ノーパン女が来たぞー!」
「今日もどうせパンツ履いてないんだろ? お前確認してこいよ!」
「嫌だよ気持ちわりぃじゃん。それにあいつ、ズボンしか履かないからめくれねぇし。確認すようないじゃん」
「警戒してんだろ? バカじゃねぇの? お前のなんかきたねーから、誰も触らねぇって!」
学校で自分のクラスに入るなり、男子達がゲラゲラ笑いながら私を見ている。
(はぁ~、まただ……もう嫌だなぁ……)
星は心の中で不満を漏らしながら、自分の机にランドセルを下ろした。
もうこんな状態が1年近くも続いている。初めは軽い罵声くらいだったのに、どんどんエスカレートしてきて、今では物を隠されたり、仲間外れにされることが多くなっていた。
今ではこうして、クラスメイトに罵られるのが日常の一部になっていた。
こういう話をすると大人に相談すればいいだろうという人もいるが、その頼みの大人達もいじめに関しては見て見ぬふりだ。
それどころか「そのうちなくなる」「お前が何かしたからじゃないのか?」「今は忙しいから後にしてくれ」などと言って、問題を先延ばしにするだけだった。
どうしてこんな事態になってしまったのか、本人も分からない。だが、1つ言えることは『真実はいじめの当事者にしか分からない』ということに尽きるだろう。
子供同士のいじめの特徴として、いじめる時は大人にバレないようにするのが基本であり。現実として、その現場を第三者が抑えるのは非常に困難なのだ。いや、状況証拠だけを出しても見て見ぬふりをしていると言った方が正しい。
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