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2人は街の噴水近くのベンチに腰を下ろしながら、しばらくの間少女に慰められ、やっと星は落ち着きを取り戻した。
そして、星がどうして泣いていたのか、その理由を聞いた途端。今まで優しい笑顔を浮かべていた少女が、急に顔を真っ赤にして怒り出す。
「――なにそれ! それは間違いなく向こうが悪いわ!」
「いえ、でも……私からぶつかっちゃったので……」
腕で涙を拭う星を覗き込む様に、少女が顔を近付ける。
その美しい青い瞳を細め、小首を傾げた彼女は視線を逸らす星に尋ねた。
「あなた。ほんとにそう思ってる?」
「えっ? は、はい……」
「はぁ……そうね。初めてじゃ、そう思うのも無理もないか……」
少女はため息をついてそう呟くと、自分の膝の上に手を置いてゆっくりと話し始める。
「――いい? このゲームでエルフは、3種族内で最もスピードが速い種族なの。多分向こうからは、レベル差もあるからあなたの動きなんて、きっと止まって見えていたはずよ?」
「……えっ? でもぶつかって……」
彼女は呆れ顔でため息を漏らすと、こめかみの辺りを押さえた。
「はぁ……だから、向こうはわざとあなたにぶつからせたの! よく居るのよね。初心者プレイヤーを虐めて喜んでるやからが……」
その話を聞いた星は、しょんぼりと肩を落としただただ地面を見つめる。
落ち込んだ様子の星を見て、少女が声を上げた。
「――そうだ! 今から私が戦い方を教えてあげる!」
「……えっ?」
「もちろん。あなたが良ければの話だけど、どうかしら?」
「は、はい! よろしくお願いします!」
星は嬉しそうに頷くと、彼女のその申し出を快く受け入れた。
正直。ゲーム事態初心者で右も左も分からない星にとって、彼女の申し出は願ってもないものだった。しかし、VRMMOという現実世界と類似して肉体を動かすこのゲームでは、ゲーム自体が初心者の星には優しいとはとても言えない。だが、戦闘を覚えておくのは、今後の為にも有意義なものになるだろう。
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