富士の遺産

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 誰もが何が起きたのか分からず。ただ武器を握り締めたまま、その場に立ち尽くしている。   荒い息を繰り返し、鬼の様な形相をしていた。  サラザはその冷えきった空気に気が付くと、いつもの声のトーンに戻り「やだも~」と体をくねらせている。  それからボスまでの道中に出る敵は、全てサラザのバーベルの餌食となり、5人は危なげなくボス部屋まで辿り着いた。  ボスの部屋には大きな古い扉が行く手を阻んでいた。 「なによ。こんなチンケな扉で、私の行く手を阻もうなんて500万年早いわ~」 「あっ、もう少し慎重にした方が……」  エミルの制止も聞かず、サラザはその鍛え抜かれた肉体を遺憾なく発揮して、1人でその重そうな扉を開いた。  すると、中からまるで雛人形のお雛様のような、一二単を纏った透き通るような長い黒髪の女性が背を向けるようにして立っていた。 「おぉ~。これが今や伝説と化した大和撫子! まさかこんなところでお目にかかれるとは!!」  それを見たデイビッドが歓喜の声を上げた。その言葉を聞いた女性陣がギロリと鋭い視線をデイビッドに向ける。 「はぁ~。男ってどうしてこうなのかしら……」 「デイビッドさん……」 「デビッド先輩はラビットで十分でしょ?」 「あら~。大和撫子が好みなんて、私困っちゃうわ~」  女性4人?はそれぞれに呟く。1人だけ明らかにおかしい反応を見せているのは、この際あえて触れないでおこう……。 「でも大和撫子は2人もいらないわ……悪いけど、ボロ雑巾の様に捻り潰して上げるわ」  低い声でそう呟いたサラザが部屋に一歩足を踏み入れると、女性のすすり泣く声が聞こえてきた。 「あの人。どうしたんでしょう……」  星がぽつりと部屋の中央でしくしくと泣き続けている女性を見て、不安そうな表情でエミルを見上げる。
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