初めてのVRMMO

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 街を出た2人は【始まりの草原】という見渡す限り、木なども全くない大草原へとやってきた。  草原には多数のLv1と表示されたこの世界最弱モンスターのラットが、草原を我が物顔で歩き回っている。  その中には初心者のプレイヤーも複数居るようだが、間隔も十分に空いているので邪魔にはならなそうだ――。  隣に立っていた少女が、ゆっくりと星の方を向く。 「そういえば、あなたVRMMO系の戦闘は初めて?」 「は、はい……」  悠々と歩くラットを見て肩を強張らせながら、緊張した様子で返事をする星の姿を見るなり少女は「ぷっ」と息を漏らした。 「あんなラットくらいで緊張してたら、先が思いやられるわよ? ほら、肩の力を抜いて……同じレベルなんだし。油断しなければやられないから、安心していいわよ?」 「……は、はい」  何度か深呼吸をしたものの。それでも緊張した様子で頷く星に、少女は軽く咳払いをしてゲームの説明を始める。 「このゲームの特徴は武器や攻撃なんかのスキルがないところなの。あっ、ないと言うか……まあ、あるにはあるんだけど、今は使わないから。まずはHPバーの説明だけど……多分、目に見えるところに青い円の中に数字が書いてあるでしょ?」 「はい。15って出てます」 「うん。それがヒットポイントね! でも、無くなっても近くの街の教会に送られるだけで、本当に死ぬわけじゃないから安心して」 「そうなんですね。良かったぁ……」  それを聞いた星はほっと胸を撫で下ろすと、息を大きく吐いた。  安心しきって完全に緊張を解いた顔になっている星の目の前に、少女の人差し指が突き出され。 「でも、死ぬと実際に死ぬほどではないにしても、凄く痛いから覚悟して戦うように!」  少女は真面目な顔で注意する。  一度は全身から抜けた力が緊張と恐怖から全身に再び力が入り、星は強張った全身を小刻みに震わせている。  その時、この世界にきて始めて起きた出来事が星の頭の中を駆け巡る。 (やっぱり痛いんだ……)  ゲーム世界にきてからバラの花を持った時、転んだ時、どちらも痛みがあった。  そうなのだろうとは予想をしていたものの。あらためて痛みがあると聞くと、やはり物怖じしてしまう……。
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