富士の遺産

9/29
129人が本棚に入れています
本棚に追加
/1838ページ
「――蛇は獲物を締め上げ、弱ったところを捕食する。こちらがピンピンしておるうちには、それほど、激しく攻撃はしてこんだろう……しかし、だからと言って、こちらも無策で飛び込むわけにもいかん」 「作戦か……そういうのを考えるのは、俺はあまり得意じゃないんだよな……」 「私もあの大きさの敵を相手に、この人数じゃあまりに厳しいと思う……」  マスターの話を聞いて、弱気な発言をしているデイビッドとエリエを尻目に、サラザがヤマタノオロチの前に出て堪らず声を上げた。 「なによ! 皆、弱気じゃないの。所詮は8匹の蛇でしょ? 私が敵の注意を引くわ。その間に、皆でじゃんじゃん攻撃よ~」  サラザはそう言って敵を睨むと「ビルドアップ!」と大声で叫んだ。  その直後。サラザの体から金色のオーラが吹き出し、鍛え抜かれた全身の筋肉が更に盛り上がっていく。もはや、その姿は人というより獣に近いかもしれない。  マスターはその様子を食い入るように見ると。 「ほう。なかなかの技だな……その力、儂も使わせてもらおう。明鏡止水!」  っと叫ぶと、彼の体もまたサラザ同様に全身から金色のオーラが立ち昇る。 「――なんですって!! あなたもビルドアップを使えるの!?」  サラザは同じようなマスターの姿に、さすがに驚きを隠せない表情でマスターを見た。  マスターは「はははっ」と大きな笑い声を上げ、ニヤリと不敵な笑みを浮かべ。 「これは明鏡止水。儂の固有スキルの力だ……このスキルはな――」  マスターが自分の固有スキルについて説明しようと口を開いた直後、ヤマタノオロチの頭の一つが2人を目掛けて突っ込んできた。  それを跳んで素早くかわす。
/1838ページ

最初のコメントを投稿しよう!