富士の遺産

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 2人はその攻撃を軽々とかわしてマスターが叫ぶと、地面を削るように蛇の頭がぶつかって怯んでいる複数の頭の上に飛び上がり。 「カレン! 儂を奴目掛けて投げろッ!!」 「はい。師匠!」  カレンは彼の伸ばしている腕をしっかりと掴むと、体を回転させてマスターを思い切りヤマタノオロチ目掛けて勢い良くぶん投げた。 「いっけえええええええええええッ!!」  マスターは空中で腕をクロスに交差させ、弾丸の如く一直線に飛んでいく。  それに気付いた敵も口を開いて真っ直ぐ飛んでくるマスターを待ち構えている。 「――ふんっ。その程度でこの儂をやれると思っておるのか!? さすがはコンピューター。武闘家を舐め腐っておるわ……ならばそのデータ。今すぐに書き換えてくれようぞッ!!」  叫びながら敵の口の中に迷うことなく飛び込んで行った。  ――バクンッ!!  上下に開いた大きな口でマスターを飲み込むと、ヤマタノオロチはその口を固く閉じた。その刹那、その頭が外からも分かるほど金色に発光し始めた。  っと思った次の瞬間。蛇の頭が真っ二つに裂け、中からマスターが飛び出してきた。  ――ギャアアアアアアアアアアアアアアアッ!!  断末魔の叫びを上げ、ヤマタノオロチの頭がそのまま真っ二つに裂けた頭が地面にだらりと落ちる。  ヤマタノオロチは頭を1つ潰されたことで警戒したのか、今まで伸ばしきっていた頭をまとめるように集めると、大きな黄色い瞳でこちらを見つめる。 「 ふん。今頃警戒を始めおったわ……カレン!」 「はい、師匠!」  カレンは拳を構え直し、真剣な面持ちでヤマタノオオロチを見据えた。
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