富士の遺産

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「ふんっ。これでしまいにしてやろう。ダークネス……」  マスターはそう呟くと、全身の金色のオーラが消え、今度は黒いオーラを拳に宿した。  その直後、マスターはヤマタノオロチの胴体に向けて強く握り締めたその拳を放つ。 「はあああああああああああッ!!」  マスターは叫びながら拳を連続して叩き込んでいく。その拳から放たれる打撃のスピードが速過ぎて、まるで拳が無数に存在しているかのような錯覚に陥るほどだ。  普通のMMORPGならあるソードスキルや魔法スキルのような攻撃スキルのないフリーダムでは、個人の持っている力が最大の武器になる。  確かにお金を使う事で現実世界にあるショップから道具や武具などを購入する方法もあるのだが、所詮は武器防具は補助的な役割で、やはり上位に上がってくるのはそれ相応の固有スキルや武術の実力を持っている者だけなのだ。  マスターの連続パンチにヤマタノオロチのHPバーは見る見るうちに削れ、ヤマタノオロチは抵抗する暇もなくその場に崩れ落ちた。  大きな爆発音のような音とともに巨体が地面に伏せ、ヤマタノオロチの周りには土煙が上がった。 「さすが師匠!」 「さすがはマスターだ! ……だが、とても人間技とは思えないが……」  カレンとデイビッドはガッツポーズをしながら換気の声を上げる。  その圧倒的な力を見れば、ゲームバランスなんていうものが本当にあるのか不思議なくらいだ――。 「――あの老人。一体何者なの!? ヒューマンなのにボディービルダー並みの体付き、そしてエルフ並みのスピード。全てが桁違いだわ……」  それとは対照的に口をあんぐりと開けたままサラザは驚愕しながら、高笑いをしているマスターを見つめていた。  ヤマタノオロチが光りとなって消え去ると、そこには古そうな宝箱が現れた。マスターは徐ろにその箱に近づいてと、ゆっくりと蓋を開ける。
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