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そこに遠慮しがちにエリエが近付いてきた。
「なら、私が……」
「うむ」
マスターはエリエに何の躊躇も未練もなくアイテムの所有権を渡した。
「やった~! これで星も喜ぶぞ~」
エリエは笑みを浮かべながら、その羽衣を手に喜びのあまりくるくるとその場で回転している。
無邪気な子供の様に喜びを全身で表現しているエリエを見て、カレンはますます不機嫌になり「師匠が倒したのに……」と最後の抵抗と言わんばかりに、小声でぼそっと呟く。その時、落ち着いた顔つきだったマスターの表情が急に鋭いものへと変わった。
眼前の先には腕を組んでたたずむ、仏像らしき見るからに怪しい物がある。
「あの後ろから風が吹いておるな……」
マスターがそう呟くと、デイビッドは半信半疑でその仏像の後ろを確認してみる。
すると、彼の言う通り仏像の後ろに少し隙間があり、そこから微かに風の音が聞こえていた。
「マスターの言う通りだ。この裏にまだダンジョンが続いているみたいだぞ?」
「えっ!?」
「ほんとなの~」
デイビッドのその言葉に、エリエとサラザが慌てて駆けてくる。
仏像の前で2人は耳を澄ませてみると、微かに風の音が聞こえた。
「以前来た時には、こんな仏像はなかったよ?」
「私も始めて見たわ――って事は、私達が来た後にできたのかしら~」
エリエとサラザは顔を見合わせながら首を傾げた。
まあ、いつエリエ達がこのダンジョンを訪れたのかは分からないものの、間違いなく事件より前であることは想像がつく。
しかも、出現するボスが別の物にすり替わっていることから考えて、何らかのシステム変更がなされたのは疑いようがないだろう。
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