初めてのVRMMO

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 星はVRどころか、子機などのゲーム自体したことがないという事実を少女に告げた。  さすがにそれには、少女も小学生でゲームをしたことがないということに少し驚きを隠せない表情をいていたが、すぐに冷静になって。   「……なるほどね。ゲーム自体が初めてということは、オンラインゲームも初めてなのね」 「はい。ごめんなさい……」  星が俯き加減に謝罪をすると、少女は少し困った顔で聞き返した。 「いや、別に謝ることじゃないんだけど。なら、どうしてこのゲームをしようと思ったの? 正直。初心者の子には少し……というか、かなり難しいジャンルのゲームだと思うんだけどVRって……」 「いや、それは……その……」  星は彼女のその質問に思わず口を噤んだ。  それもそのはずだ。まだ出会ってそこまで経ってない人に『母親に怒られた勢いで、見知らぬ人から貰ったゲームをプレイした……』なんて、とてもじゃないが言えない。  下を向く星を少女は不思議そうにただ見つめている。が、すぐにパンッと手を叩くと。 「まあ、いいわ。人にはそれぞれ事情があるもの。無理に喋らなくても――ねっ?」 「は、はい!」  表情をパァーと明るくする星に、少女も安堵した様子でほっと胸を撫で下ろす。 「それより問題なのは……」 「――も、問題なのは……?」  少女はそう言って身を乗り出すようにして星の顔を覗き込むと「あなたのレベルとキャラ名でしょ?」と、彼女は今までで一番の笑顔でにっこりと微笑んだ。  ゲームの仕様で、パーティーを結成しないとキャラクターの名前とレベルは表示されないようになっていた。   それはプレイヤー同士での些細ないざこざを起こらなくすることと、ゲームシステム上の処理速度の面でも、名前などの細かい情報を表示しない方が効率がいいという両方の利点があるからだ。  星は「はあ……」と間が抜けたように返事をする。  理解が追い付かず、完全に置いてけぼり状態の星に微笑み掛けた。 「とりあえずPT組みましょう。そうすれば、レベルと名前が分かるしね!」 「へぇ~」 「ほら、分かったなら早く【YES】を押して」 「は、はい!」  彼女に急かされるように言われ、星が慌ててコマンドの【YES】の方の画面を指で突いた。 
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