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星はそれを見て思わずエミルの背中に隠れると、怯えた子犬のような瞳でサラザを見た。
サラザはその様子を見て足を止め、残念そうに指を咥えている。
「どうして私には懐かないのかしらね~」
そう言ったサラザを、その場にいた全員が見た。
おそらく。その場にいた皆が同じことを考えていただろう、その外見が一番の原因だろう――っと…………。
その後、最深部へと向かって進み始める。
最深部に向かう階段は両サイドが岩盤に覆われていて思っていたより狭く、大人2人が並んで通れるぎりぎりの大きさしかない。細い通路のあちらこちらに松明が並べられていて、それが道をぼんやりと照らしている。
しかし、先は肉眼では確認できず。どこまでも真っ直ぐに、通路を照らす松明がぼんやりと点の様に見えるだけだった。
どこまでも続く闇の中に飲み込まれそうな感覚に襲われ。
(薄暗くて、ちょっと……怖いかも……)
星はそう思いながらも、どこまで行っても終わりそうもない長い階段を、どんどん奥へと向かって進んでいく。
それから20分近く歩き続けると、少し広い場所へと出た。
部屋の壁に掛かった松明が少なく通路よりも暗く、足元も見えないような状態だった。その状況が一層、星の恐怖心を掻き立てる。すると、横を歩いていたエミルが徐ろに星の方を向く。
「皆。足元が見えにくいから注意してね!」
エミルはそういうと、再び辺りを注意深く見渡す。
薄暗く松明の光りがゆらゆらと揺れる通路は、もしトラップがあっても絶対に気付くことができないだろう。
「やっぱり暗いわね……」
「エミル姉。お困りのようだね~」
何かを企んでいる様なそんな悪戯な笑みを浮かべているエリエには、何か考えがあるようだ。
「えっ? 何かいい方法があるの? エリー」
「もちろん!」
エミルの耳元で何かこそこそと耳打ちするエリエに、エミルは少し嫌そうに「えー」と言った。
その反応を見てもあまり良い考えとは言えないことは、星にも何となくだが分かったが、自分が口を出すことでもないので黙って事の成り行きを見守る。
「なら、暗いままでもいいの? ほら、早く!」
「もう……分かったわよ。やればいいのね」
エリエに急かされエミルは仕方なく、アイテムの中からドラゴンを呼び出す巻物を取り出す。
エミルは言われるがままに、巻物を地面に広げると笛を鳴らした。
直後、辺りに白い煙が立ち込め、悪い視界が更に悪くなる。
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