ダンジョン最深部へ

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 そう。VRMMORPGフリーダムでは【RMT】をゲーム会社側が承認しており。お金を出せば、手っ取り早く自分を強くすることができる。しかし、装備にはレベル制限など様々な制約がついていて、お金だけでは解決できない障害もある。    だが『天女の羽衣』のように、その制約を度外視するようなアイテムがあり。これらのアイテムは非常に入手し難い上にRMTの市場の中でも出てくるのがまれで、もし出てきたならばとんでもない高値で取引されているのだ。  こう言ったチート的なアイテムが存在することでプレイヤーのモチベーションを上げ、飽きのこないようにするという運営側の思惑もあるのだろう。  本来ならば、星のようなゲームを始めてまだ日の浅いプレイヤーが手にできるようなアイテムではないのだが、他のメンバーが皆高レベルプレイヤーということと、エリエのような実際に使用したプレイヤーが近くにいたので運良く入手できたわけだ――。 「でも、HPが増えても防御力が変わったわけじゃないのよ? だから、あまり強い敵に攻撃されると、私達よりも早くHPが減っちゃうから、そこだけは注意してね!」 「はい。分かりました」  そう返事を返すと、エミルはにっこりと微笑み星の耳元でそっとささやく。 「……もし、その服が気に入らなかったら後で、星ちゃんの気にいった服を買いにいきましょう。私のアイテムを使えば、装備の付け直しができるはずだから……」 「えっ? いえ、この服で大丈夫です!」  星は慌てて、両手を振ってそれを全力で断る。  彼女の持っている高価なアイテムをこれ以上使われたら、堪ったものではない。ただでさえ気苦しさで押し潰されそうに、これ以上は身が保たなくなる。  エミルはそれを見て「そう?」と少し不安そうな表情を見せる。  星はそんな彼女に「はい。素敵なお洋服をありがとうございます」とお礼を言って笑顔を見せると、深く頭を下げた。  少し照れくさそうに笑ったエミルは「もう少し、星ちゃんの好みが分かるように勉強が必要ね」と星の頭を撫でた。  星がまんざらでもない様子でいると、どこからともなくサラザの声が聞こえてきた。 「なに星ちゃん。その可愛いお洋服は……だっ、抱っこさせて~♪」 「……ッ!?」  気付いた星がその声の方を向くと、そこには厚化粧をした筋肉ムキムキのオカマが全力で向かってくる姿がそこにはあった――いつの間に化粧をしたのかは分からないが……。
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